花の万博の基礎知識
名称
- 日本語
- 国際花と緑の博覧会
- 英語
- The International Garden and Greenery Exposition,Osaka,Japan,1990
- 仏語
- L'Exposition Internationale du Jardin et de la Verdure,Osaka,Japon,1990
略称
花の万博 EXPO'90
テーマ
「自然と人間との共生」
ねらい
花と緑と人間生活のかかわりをとらえ、21世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす。
博覧会の性格
国際博覧会条約に基づく特別博覧会であり、東洋で初めての開催される大国際園芸博覧会である。
会期
1990年4月1日~9月30日(183日間)
開場時間
4月1日~4月26日 午前9時30分~午後10時
4月27日~9月30日 午前9時~午後10時30分
場所
大阪「鶴見緑地」 大阪都心から東へ約8km
会場面積
約140ha(駐車場・関連施設等を含む)
入場者総数
23,126,934人
花の万博の基本理念
人類の宇宙飛行は、地球が唯一の青い惑星であることを教えた。高度の生命科学は、逆に一層、生命の奥深い神秘に気づかせた。
20世紀の産業文明の発展は、今あらためて、あの花と緑に象徴された、自然の生命の偉大さを再認識させている。緑こそは、無機物を有機物に変え、生命を根源から生む力である。花はこの隠れた力の優美な表現であり、生命そのものの讃歌である。これを愛し敬うことは、自然と生命を共有する人間の心の本能であり、人間相互の尊重、世界平和への願望のもっとも素朴な基礎だといえる。
そして、21世紀を目前にして、世界文明が大きく変わろうとしている今日、花と緑を身近なものとする技術、園芸と、それにつながる生命科学は画期的な意味を持ち始めた。世界の多くの国々において、都市化は歴史的規模で進展しつつある。高密度の人口集中地域に住み、その中で生涯をおくる人間の急増は、都市の内部に花と緑のふるさとを創造する必要を高めている。自然を愛し、自然を畏敬し、生命を祭る場所と仕組みを、ちまたの中にこそつくらねばならない。住環境を高める園芸の普及、公共的庭園の充実、また自然を学びその美をたたえる施設の整備は、人類の基礎的な生活要求の一部と見なければならない。世界の諸国とともに、日本も路地の一隅にさえ花と緑を育てる伝統を持ち、都市生活の中に自然を創造する独自の技術を培ってきたが、これは21世紀に臨む現代にこそ活かされるべきであろう。
また、今日の世界は大衆社会に向かって動いており、多数の人々が等しく質の高い生活の享受をめざし、文化施設についてもそれが万人のものであることを求めている。これに応えて公園も、このような時代の変化に対応して、積極的に雑踏に耐える花と緑を提供しなければならない。そのためには現代の最高の科学技術を活かし、伝統的な園芸と庭園の知恵を守ると同時に、新しい広場の造形に挑戦すべきであろう。一方、現代人は雑踏の中にあっても緑の前に身を慎み、節度ある自然との交歓と相互の創造的な連帯をめざした、新しい園遊の作法を生みださなければならない。
さらに、現代は、産業社会の構造的な転換の時代であって、従来以上に人間の生命とその環境を尊重し、しかも自然の生命を活用した生産がめざされている。全人類の一層の豊かさと生活の質の向上の糧として、花と緑を積極的に作る技術、機械生産と自然を調和させる技術はもちろん、自然の神秘そのものに依存する生命工学の発展が促されている。今日の花と緑の博覧会は、そうした産業思想の転換を紹介し、産業と生命、文明と自然が対立者ではなく、本来、調和しあう存在であることを確認する場所ともなるはずである。
世界の産業先進国のひとつであり、現代人類の課題を典型的に負っている日本は、自国の文化伝統と、世界の多様な庭園、園芸観の遺産を踏まえながら、今回の博覧会で大胆な実験をも試みて、21世紀の地球社会の平和と繁栄に貢献したいと願っている。